■大浴場に投げ込まれ「頭を冷やせ!」
船木誠勝はUWF勢が乗り込んだ2台のタクシーを見送った。
直後、誰かに首根っこを掴み上げられる。
坂口征二だ。
坂口は、武藤敬司と船木誠勝を大浴場につれていき風呂の浴槽に投げ込んだ。
「頭を冷やせ!」
といったところだろう。
武藤と船木は冷静になり、その後、風呂の中で大笑いしたらしい。
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■電話「今すぐ俺がいるスナックに来い!」
その後、船木誠勝は自分の部屋で寝る準備をしていた。
その時、突然、部屋の電話が鳴り響く。
出ると、相手は高田延彦だ。
「武藤と船木、今すぐ俺がいるスナックに来い!」
高田は、ひとりスナックで飲み直しているらしい。
先輩からの呼び出しに対し、断ることなどできない。
急ぎ、武藤敬司を呼びに彼の部屋に行った。
「武藤さん、高田さんから今すぐスナックに来いと電話が来ました。俺、行きますから、武藤さん、いっしょに行きましょう。」
しかし武藤は「ダメ~。無理~」という状態で起きようとしない。
しょうがないので、船木は同じ部屋に泊まっていた飯塚高史を連れて行くことにした。
(注:飯塚高史は今でこそ「ヒール」だが、当時は普通の新人だった)
そして、朝まで3人、そのスナックでカラオケをやって過ごした。
尚、前田日明は、藤原喜明に「飲み直すぞ!」と誘われて出かけていたらしい。
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■明け方1人で片付けをしていた偉大な人物
この時点で時間は何時だったのか、明確な証言は無い。
しかし、明け方4時頃に、旅館の従業員と一緒に一生懸命片付け・復旧作業に勤しんでいるレスラーを、越中詩郎が目撃している。
我らがドラゴン藤波辰爾である。
また、ドン荒川も「早朝に藤波がメモを持って被害状況を記録していた」と証言している。
藤浪本人も後年「性格的に放っておけないところがあり、団体のトップでもないのに、ひたすら旅館のおかみさんに頭下げ、旅館に迷惑かけないよう掃除をした」と回顧し語っている。
一方で、蝶野正洋は、「猪木さん、坂口さん、藤波さんらと後片付けをした」と証言している。
ほぼ全員酔っ払っていたわけで、もはや、誰が真相を語っているのか分からないのが現状といって良いのかもしれない。
■従業員たちは見送りなし
一夜明けた翌日。
いうまでもなく、大勢がひどい二日酔いに襲われていた。
到着時は大歓迎だった旅館の従業員たちは、帰るときの見送りはほぼ無しの状態だったらしい。
帰り際、
「ウチの旅館がこんなになっちゃった…。もう二度と来ないでください…」
と、女中が泣いているのを越中詩郎は見逃さなかった。
そして一行は次の試合会場へと向うのであった。
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■弁償代はいくら?猪木「意外と安かったな」
さて、気になるのは旅館に支払った弁償代である。
旅館からは、建物の修理・清掃代金の他、 約1ヶ月間、酒とゲロの臭いが取れるまで営業ができないための保証費用が請求された。
いったい、新日本プロレスリング株式会社はいくら請求されたのか?
弁償代には諸説があり、200万や400万、一説では600万とも言われている。
武藤敬司は「( 坂口征二から )『800万とか900万円を取られた』と聞いた」と後年、テレビ番組で語っている。
真相は、当時の社長であるアントニオ猪木や金庫番であった坂口征二であれば知っているはずだが、現時点で明確な金額に関する言及はない。
尚、暴れた当人である前田日明、武藤敬司、ジョージ高野、後藤達俊たち若い衆には一切お咎めは無かったそうだ。
ちなみに、請求額を見たアントニオ猪木はこう語ったという。
「いくら取られた?意外と安かったな。あの旅館を買って合宿所にすればよかった」
当時の日本の経済はバブル全盛の時代。
新日本プロレスリング株式会社もかなり景気が良かったと思われる。
その一言を聞いた藤原喜明は思った。
「凄い会社に来たな。もっとギャラが上がりそうだ」
(完)